休眠預金(休眠口座)の落とし穴

2018年から休眠預金活用法が施行されている。この法律には落とし穴がありそうで、来年から「政府による老人の財産取り上げ」が話題になりそうだ。

注目したいのは、何年、何十年も放置されている、定期預金である。30年40年前銀行は金利自由化に対応して、300万円以上、500万円以上、1000万円以上の預金を、自動継続の大口定期預金、スーパー定期預金などに勧誘した。今回の法律施行で注意が必要なケースはかなり多そうだ。①昔に退職したサラリーマン、投資に詳しくない人で退職金を定期預金にして、通帳をタンスに入れて保管している。②資産家、海外長期赴任者などでセキュリティを考えて預金通帳を金庫に入れ、長年放置している。③転勤の多い忙しいサラリーマンで、定期預金を作った後、放置している。

従来は自動継続定期預金は10年以上放置していても休眠口座にならず安全だったが、今年からは休眠預金活用法に基づき自動継続定期預金が休眠預金にされて没収対象になってしまう。長らく入出金のない総合口座普通預金、信託も残高に関係なく没収対象になってしまう。銀行による利子・分配金の支払いは「入金」行為と見なさないのが、今回の法律の特徴だ。

従来銀行は、最高裁判例もふまえ「自動継続定期預金の、休眠計算開始日は、新たに作られた定期預金日、つまり更新日としていたから、自動継続定期預金は休眠口座にならない」と公表していた。それが、今回の法律では、「自動継続定期預金の、休眠計算開始日は最初の満期日」に定められた。例えば1年自動継続定期を1995年に作り記帳もせずに金庫にしまいぱなしの人は、1996年が計算開始日で、それから10年、2006年で休眠預金になっている、また銀行の統廃合で2009年ごろに、銀行から銀行名変更などの通知を受けていれば2009年が起点になり、2019年には休眠預金になるはず。すると今回の法律で、2019年の始めに銀行から本人宛に、休眠預金になりますという通知が郵送されることになる。通知が届くと、さらに10年間は休眠預金にならない。もし未達で銀行に通知が送り返されると、やがて休眠預金になる。しかし、それ以降でも、本人が銀行窓口に出向いて手続きすれば、預金(休眠預金)はおろせることになっている。

落とし穴というのは、①転居したが銀行に住居変更手続きをしていない。病気で動けず子供に引き取られた時など起こりがち、②死亡している時、③市町村名などが変わってしまったことなどによる郵便配達ミスなどである。

①②③の時は未配達になり、本人も休眠預金になったことに気づかない。遠方に転居していたり、老人故、病気や認知症で銀行窓口に行くことは出来ないことも多いだろう。さらにキャシュカードは無効にされている。休眠預金は生きている預金と違い、代理人による手続きが認められるか不明で、メガバンクで「本人が銀行窓口で手続きをする」とホームページで書いている所もある。また相続で預金通帳が見つかっても、休眠預金になっていれば、相続人ではおろせないだろう。このあたりは金融法律の専門家以外、解らない。預金は預入者と銀行との契約だが、休眠預金はこの法律により預入者の預金保険機構にたいする請求権に変わってしまう。休眠預金払い戻し請求時、銀行は代行者にすぎず、金融庁の裁量も含め現在全容は不透明と言えよう。裁判になれば財産権の侵害で憲法違反というケースもあるかもしれない。

自分の預金を守るには、①自動継続定期預金は今年中に記帳する。以後5年毎には記帳する。②総合口座は入金出金が容易なので、今年中に1000円でも入金なり出金をする。以後毎年1回は入金なり出金をする。③定期預金を総合口座に統合してもらう。総合口座の記帳も5年毎には行う。などの対策が重要だろう。また預金種別や金融債などで銀行毎の扱いが違うことも有りうるので、自分で問い合わせて対応することが大切だろう。 

 この法律の怖さは、個人の保管財産のつもりの預金も、10年入出金がないという法律要件を満たせば「使われていない口座」と認定されてしまい、本人の気付かない内に、「預金」でなくなってしまう点である。

 たとえで言えば、一定期間出入りのない家は空き家(休眠預金)と認定して、困っている人が住んで良い(NPOに配る)という法律ができ、自分が長期旅行から帰ってみれば、我が家が合法的に乗っ取られてしまった(預金で無くなった) という話である。